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梅雨に入り夏を控え、雨の多い季節になりました。近年は毎年何度も豪雨があり、先日の雨でも警報が発令されました。あらためて今一度、水害時避難への準備を考えてみたいと思います。地震やその他の災害時にも共通する部分は多いと思います。どこで災害に遭うか、によっても状況は異なりますが、ここでは自宅で被災した場合(被災しそうな場合)について検討します。また山歩きの装備がどういった具合に防災に役立つか、その事についても考えてみたいと思います。

避難は、「自宅避難」「避難所避難」と2段階に分けて考えました。避難所への避難に必要な持ち出し品は、あらためて考えてみると、テント泊山行の装備と類似します。「必要最低限の生活維持」という意味で、場所こそ違いますが、避難所とテント場では似た状況なのかもしれません。防災バッグ等の非常時に役立つキットが詰まったものも販売されていますが、山歩きが好きで、テント泊装備が揃っている人なら、それがひとまず避難装備となるでしょう。毎年のように起こる自然災害への備えとして、アウトドアの知識は役に立ちます。今まではあまり興味がなかった方も、こういった装備を知り、使い慣れておくと、きっと役に立つと思います。

<豪雨・ライフラインストップの可能性が発生>

(ファーストステップ)

確認するもの 

【スマホ・バッテリーとケーブル・ヘッドライト・貴重品】

(自宅避難)

確保すべきもの 

【飲水・保温装備・安全な服装・熱源】

やっておく事 

【浴槽に水を溜める、水のう作り、荷物を高いところへ移動、保存食の整理、トイレの確保、移動避難の準備】

(避難所避難)

避難装備 ※移動前にボトルへ水を入れる

【テント・寝袋・銀マット・ボトル・保温瓶・浄水器・バーナー・クッカー・カトラリー・非常食・ビニール袋・エマージェンシーキット・雨具・手袋・靴】

(解説)

警報が出るような強い雨や長い雨が来たら準備をします。

(ファーストステップ)

最初に確保すべきはやはりスマートフォンかと思います。充電を確認して、フル充電に戻します。予備バッテリーとケーブルも確認します。ネットで拾える情報が時に命を救います。身内の安否確認、SOSの発信、それらを2~3日は確保するために予備バッテリー(電源)とケーブルも必要です。そして特に夜間の避難ではヘッドライトが重要です。自宅避難であっても暗闇での作業は危険です。スマホのライトの使用は電池の消耗を防ぐために極力避けます。貴重品はいつでも持ち出せるように防水の袋にまとめます。

(自宅避難)

水道・電気・ガスが途絶えた場合のため、飲水をタンクやボトルに確保します。6L/人(3日間)を目安にします。建物が破損した場合でも、浸水・雨・風、それらから身を守り、身体を濡らさず温かく居られる状態を作る事を考えます。最低限の衣類は濡れない所で確保します。服装は動き易いものに着替え、濡れた時のために綿製品の着用を避けます。お湯を沸かす事ができる熱源(火)があれば、体力的に幾分楽になります。「自宅避難」は既に避難所への移動が出来なくなっている場合も該当します。状況は様々かと思いますが、物資は移動避難した場合よりたくさん身の回りにある事が多いはずです。水道が使える場合、浴槽に水を張り、重ねたビニール袋にも水を溜めて水のうを作ります。段ボールがあれば水のうを入れて準備します。段ボールは水のうを重ねて高さを出すのにも使えます。浸水箇所に積んで時間をかせぎます。荷物を少しでも高いところに移動させ、長期戦に備えて保存食の備蓄確認と整理をします。トイレはビニール袋に破った新聞紙を入れたものを用意します。後に移動避難の可能性があるので上記移動避難用の装備点検をします。高齢者や小さな子どものいる家庭では、安全を考慮し、早めに移動を済ませます。

(避難所避難)

避難所へ移動する時、まず安全に避難出来るかよく考えるべきと思います。夜間や悪条件での移動はリスクを伴います。水深が膝まであれば大人でも流される可能性があります。ここでは自宅避難を先に書きましたが、安全に移動が出来る間に避難する事が何より重要です。移動する場合は上記の装備を持ち出します。装備が重たく危険を感じる場合は安全最優先で考えます。テントを持たないという選択肢も出てくると思います。水しか持てない事もあるかもしれません。上記の装備はおおまかに、山歩きの標準的な装備です。使い慣れていれば、山での按配でしばらく生活する事ができます。日常的にセットして(※装備の管理方法としては推奨されません)、持ち出す前にボトルへ水を入れるだけの状態にしておくのが良いかもしれません。以下、それぞれのアイテムの紹介です。

【テント】

 屋外で雨風を凌ぐ。避難所でプライベート空間を作る。

【寝袋】

 ダウン製品は濡らさないよう注意。避難が長期化すると安眠できるかどうかは体力的に重要です。

【銀マット】

 マットは色んな形のものが有り、厚みがあるほど快適で寒さも凌げます。銀マットは2〜3mmと薄いですが折り畳めば厚みを作る事も出来ますし、広げて身体全体に巻き付ける事も出来ます。

【ボトル】

 蓋が出来て持運びができるもの。水を蓄えます。何もなければペットボトルで構いません。お湯を入れれば湯たんぽにもなります。保温瓶に比べると軽量性が高いです。

【保温瓶】

ボトルと併用して保温瓶があると、お湯が手に入った時に役立ちます。温かい食事もしくは白湯を飲むだけでも辛い時には有難いものです。嵩張りますがボトルと合計で2L/人もしくはそれ以上の容量を持ちたいです。

【浄水器】

 支給などでの飲料水確保が困難な場合、なるべく清潔そうな雨水や流水を浄水器にかけて飲みます。

【バーナー】

 湯を沸かしたり、調理に使います。

【クッカー】

 バーナーと一体になっているものもあります。鍋として、または器として使います。

【カトラリー】

 スプーンとフォークが一体になったものが便利です。クッカーとセットで管理します。

【非常食】

 食事のバリエーションがあるに越したことはないですが、まずはお湯だけで食べられる物。スナックや羊羹等の軽食もカロリー確保に有効です。食べる事は気分転換にもなります。

【ビニール袋】

 ゴミの管理に使います。食事をすると多くの場合ゴミが出ます。なるべく小さくまとめて嵩張らないようにまとめます。ジップロックがあると物の分類や防水にも使えます。

【エマージェンシーキット】

 薬やライター、ハサミなど、一般的に必要とされる小物類。揃え方は人それぞれですが、自分はTシャツと手拭いを1枚ずつここにセットします。身体を拭き、乾いた服に着替えるだけで、気力を取り戻せることがあります。

【雨具】

 防水透湿性のあるもの。風が遮断出来るので、保温着として使う事も多いです。

【手袋】

 手に傷を作ると色々な作業に支障が出ます。保温の意味もあるので、防水のものが良いかと思います。

【靴】

 登山靴は悪路を歩けて安全にも思いますが、水深にカット長が不十分だと中に水が溜まります。アウトドア用サンダル(爪先が保護され踵が固定できるもの)は、多少の水の中を歩くのには良く、避難所での利便性もありますが、水害時には細菌感染リスクや危険なものが流れている可能性があり、また濁流の水底は見えないのでやはり危険かと思います。膝までカットのあるゴム長靴(膝下で固定が効くもの)は案外というべきか、有効かもしれません。ただし長靴は基本的に脱げ易く、長距離の移動にも向きません。それぞれのものに長所短所があり、選択に悩む部分が残ります。

[テント泊装備を防災に使うために]

個人的には山行後、洗濯と乾燥が済んだらもうパッキングをしてしまいます。(※装備の管理方法としては推奨されません。)テント泊と日帰山行とでは装備が異なりますが、テント泊の装備をパッキングしてしまいます。次の山行が日帰や小屋泊であれば、そこから抽出して、使用後は元に戻します。装備の管理方法としては良いものではありません。袋から出して、日陰でゆったりと広げておく事が多くのアイテムにはベストですが、入れ忘れ等のミスが起こる可能性があるのも事実です。また、緊急を要する時に時間がかかり過ぎてしまいます。しっかりと乾燥している事を確認したら袋に入れて、ザックにも収めます。これで避難時ではなくとも、次回の山行準備としてもミスが減ります。思い立った時にすぐ出発できるのも気持ちが良いです。豪雨災害が頻発するのは梅雨〜夏の終わりまでで、それ以外の時期はセットを解除してもいいかもしれません。近年のように豪雨災害が頻発するまで、自分もこういった事は考えませんでした。ダウン製品などは特に圧縮したままであるのはよくありません。

登山からは多くの事を学びますが、自然環境に曝されると「濡れ」や「寒さ」に人は弱い事を知ります。そして、飲み水を失う事への恐怖も知ります。逆に言えば、しっかりとしたシェルターと飲物があれば、しばらく人は耐えられます。被災状況には色々なケースがあり、いくら準備をしていても実際には上手く行かない事があると思います。危険を伴い、心理的にも負担は大きいはずです。それでも、そういった中で慣れた部分があれば、落ち着きを取り戻し、私たちを助けてくれるかもしれません。山を歩く事や、キャンプを楽しむ事は、もちろんそれ自体が楽しく価値のあるものですが、それが被災時の辛い環境でも役に立つのなら、一層普段からアウトドアをたくさん楽しめるようになるのではないでしょうか。

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