on the trail⑥

2021.8 唐松岳

On the trail⑥は栂池から白馬岳へアタック！を予定したものの、ott⑤のあと膝が悪化、そして予定日は雨、、、と条件が重なり中止。それにしても晴れた日の少ない夏だ、とうなだれながらWindyを眺めていると、半日ほど雲の隙間があるのを見つけた。スケジュールも問題なし。膝の具合は分からないが、とりあえず山へ行こう！ということで、こちらもゴンドラとリフトで標高1830ｍまで上がれる唐松岳へ。

当日のゴンドラ始発は7:30。ゲートでサンドイッチを食べながら営業開始を待つ。ゴンドラリフト「アダム」、アルペンクワッドリフト、グラートクワッドリフト、と３本乗り継いで８時過ぎに八方池山荘へ到着。平日だけど、登山者はそこそこ多い。２年前の冬、同じルートを登って標高2500ｍ付近で撤退した。登山口に立つと、その日の様子を思い出した。順番が逆だろう、というツッコミはもっともだが、夏の唐松岳は初めてで、山頂まで行けたらそれも初めてになる。

冬と夏で景色はずいぶん違うし、冬道とは違うところに夏のルートはついていて、時々違う山を登っているような感覚に陥りながら、ぐいぐい登る。八方池から眺める白馬三山は、やはり最高だった。神様が作り出したバランスの良い景色の配置。青空でこそないもののクリアに山が拝めてとても気持ちいい。

「ぐいぐい登る」と書いてはみたものの、たぶん自分が山を歩いている姿は「ぐいぐい」していないと思う。山歩きを始めて何年かしたら気が付くのは、「山は張り切って登るものではない」という事かもしれない。初めの頃は全てが新鮮で、必要以上に興奮もして、息を切らしながら、もっともっととペースを上げた。でもそうすると汗をかくし、要らない筋肉を使って疲労も増える。汗は汗冷えを起こし、疲労は判断力を下げる。だからどちらかと言えば、「スーッと」登るのが良いと自分は思っている。膝の調子は悪くない。今日はこのまま穏やかに下山までしたい。

２年前、恐らくこのあたりで撤退したのだろう、というポイントを過ぎた。その先の景色はすべて初めて観るものになった。八方尾根のルートは尾根をとにかく登り詰め、頂上山荘まで出ると北に進路を取る。そこから山頂までのＣＴは２０分。八方池山荘から全体のＣＴは登り４時間２０分だが、景色の迫力で言えば最後の３０分はスケールが違う。北アルプスの稜線の雰囲気は言葉を失うくらいに凄い。 山頂に着くと富山湾まで薄っすらと見えた。そして西には剱岳。風はおそらく５～６ｍ／ｓくらい吹いていた。青空ではないが視界が良く、とても良いコンディションで登頂できた。

山頂で出会った豚まん屋さんのおじさんと、写真の撮り合いっこをして世間話をした。山に居る人は面白い人が多い。もちろん自分と趣味が似ているのもあるし、皆さん色んな事に詳しくて勉強になる。刺激にもなる。おじさんは７０代だと言っていたが、３０代の自分と同じペースで登頂し、下山もほぼ同着だった。おそろしく元気だ。まだまだ本気を出していない可能性もある。

八方池の付近まで下りると、もうもうと雲がわいてきた。そして予報通り、ちょうど１２時から雨が降り始めた。振り返ると山は真っ白く何も見えず、山頂の記憶は遠い夢のようだった。